具体的な提言、代替案などをなぜ誰も言わないのだろう、と思っていましたが、
なるほど、という具体案を書いている方がいました。
1955年、東京生まれ。80年、大蔵省(現財務省)入省、理財局資金企画室長、内閣参事官など歴任。小泉内閣、安倍内閣では「改革の司令塔」として活躍。07年には財務省が隠す「埋蔵金」を公表、08年に山本七平賞受賞。政策シンクタンク「政策工房」会長、嘉悦大学教授。
今日、明日の家賃やカード、あるいは、生活費の支払いに困るの、これをどうしよう、と切羽詰まった状況なので、早急の対策が必要なんです。
最速の処理方法は政府小切手である。補正予算が通れば、2週間ほどで可能
以下は「なるほど」と思った箇所の抜粋です
「1世帯あたり30万円の現金給付」のやり方が、元官僚の筆者からみると、おそろしく稚拙で驚いてしまう。
今年(2020年)の所得に基づいて「困っているかどうか」を判断しないといけないので、自己申告にしたというが、この制度設計をした者は、当局がいつ今年の所得を把握できるのかわかっているのだろうか。現時点で、昨年(2019年)の所得を当局は把握できていない。要するに、今年の所得が把握できるのは、少なくとも1年以上先だ。
自己申告制には「虚偽申告が相次ぐのではないか」(与党幹部)との懸念があるので、政府は、証明書類の添付や不正申請に罰則を設ける案も含めて検討する方針だという。
いつの段階で、当局が所得を把握できるかもわかっていないから、罰則を設けるという筋違いの対応が出てくる。しかも、給付金は非課税措置にするという。
こういう危機の時には、思いつきの案ばかりが出てくる。原則は、既存の制度や海外の事例を参照することだ。原則を知らないと、今回のような稚拙な制度になる。
そもそも、今年の所得を当局が把握するのは1年以上先なので、事前の所得制限はできない。もし所得制限したければ、事後的にならざるを得ない。既存の制度で利用できるのは税制だ。つまり、給付金を非課税措置にしなければ、一時所得になって、事後的な所得制限が可能になる。
あとは、給付を最速で行う方法さえ考えればいい。
麻生政権時の定額給付金は地方事務であったために、給付に時間がかかったことは先週の本コラムで書いた。そのときも書いたように、最速の処理方法は政府小切手である。補正予算が通れば、2週間ほどで可能だ。
これについて、安倍首相が「国民にマスクを2枚配布する」と発表したこととの関連を考えてみよう。
4日の朝日放送「正義のミカタ」でも「2枚のマスクの間に、政府小切手があればよかったのに」と発言したところ、大いに受けた。
かつて危機の対策として、筆者は政府小切手の政策提言を出したことがある。実際に米国などで実施されていたからだ。ところが、ある政府関係者は「全国民に配布するのが実務上困難」と言っていた。
今回もやはり政府は「全国民には無理」と言っていた。
そうこうしているうちに、冒頭のように、突然安倍首相が「マスクを全国民に配布する」と言いだした。やはり全国民へ配布できるのだ。
であれば、補正予算が成立した後に、政府小切手、正確にいえば、記名式政府振出小切手を送付すればいい。記名式政府振出小切手には受取人の名前があるので、誤配達や盗難にあっても記名人以外は銀行で換金できない。というわけで、郵送では危ないという人も心配無用だ。