赤シソふりかけ「ゆかり」で知られる三島食品の新商品「あおのり」。この包装に書かれたメッセージが話題です。「今できる精一杯の青のりを準備しました。でも待っていてください。必ず帰ってきますから」。異例の呼びかけの理由を、三島食品に聞きました。(北林慎也)
【写真】「あおのり」裏面 三島食品が青のりファンに送る胸熱メッセージ
「必ず帰ってきますから」
三島食品(広島市)が7月1日に発売した、焼きそばやお好み焼きなどに振りかける「あおのり」。
国産のウスバアオノリとヒラアオノリを原料にした、グリーン基調の包装の新商品です。
その包装の表面には「三島の青のりファンのみなさまへ 詳しくは裏面をご覧ください」と注意書きがあります。
そして、裏面にはこんなメッセージが記されています。
三島食品が
品質に自信をもってお届けしてきた
すじ青のりを
伝統の青いパッケージで作る事が
できなくなりました。
国内産地での記録的な
不漁が続いた為です。
陸上養殖をふくめ
原料確保につとめていますが
しばらく時間がかかりそうです。
その間、今できる精一杯の
青のりを準備しました。
でも待っていてください。
必ず帰ってきますから。
……この「あおのり」は、原料調達が難しくなり休売を決めたロングセラー「青のり」を代替する、苦渋の新商品だったのです。
収穫激減で価格高騰
1971年発売の「青のり」は、香ばしい風味と鮮やかな色合いが支持され、三島食品を代表するロングセラーの一つでした。
ところが近年は、原料のスジアオノリの調達が難しくなっていました。
かつては全国で年間150トン以上が生産されていましたが、ここ数年は50トン程度にまで落ち込みました。
温暖化による海水温の上昇などが原因とみられています。
その結果、仕入れ価格も高騰し、市場では「高級品」扱いとなっています。
増量で価格据え置き
このような状況を受けて三島食品では、「品質に自信を持って届けられない」として、スジアオノリを用いた「青のり」の出荷休止を決断。
ポテトチップスなどのお菓子に多用されるウスバアオノリとヒラアオノリを調達し、代替商品「あおのり」の発売を決めました。
三島食品によると、ウスバアオノリとヒラアオノリは、スジアオノリよりも安価に調達でき、色合いはほぼ変わらないものの、香りや食感がやや劣るといいます。
そのため、容量2.2グラムの「青のり」に対して「あおのり」は0.1グラム増量の2.3グラムとしつつ、価格は同じ226円(税抜き希望小売価格)としました。
率直な言葉で事情説明
そのうえで、従来の「青のり」と違う商品だと明確に分かるように、包装を伝統のブルー基調からグリーン基調へと大きく変えました。
さらに、この間の事情を率直な言葉で消費者に説明するメッセージも載せました。
この誠実な姿勢に、SNSでは「誠意とプライドを感じる」「青のりを見て泣いたのは初めて」「今まで以上に応援したい」といった反響が寄せられています。
異例かつ律義な対応の理由
この異例かつ律義な対応の理由を、三島食品に聞きました。
――原料切り替えに合わせて伝統の商品名を捨てた理由は?
「『あおのり』は原料が異なるため、お客様に『青のり』とは異なるもの、と認識していただくために製品名をひらがなにしました。
また、お客様より弊社にお問い合わせをいただく際に商品名を確認しやすくするためでもあります」
――異例のメッセージ掲載はなぜ?
「陸上養殖への取り組み、原料の品質維持と安定供給を自らの手で確保する取り組みを、強くお伝えしたいと思い、コピーを入れました」
――反響に対する感想は?
「応援いただいているお声が多く、大変心強く嬉しく思っております」
陸上養殖で安定供給目指す
自然界のスジアオノリの収穫減を受け、三島食品では陸上養殖の拡大に取り組んでいます。
2015年に高知県で陸上養殖を始めたのに加え、2020年6月には、広島県福山市の養殖施設を稼働させました。
三島食品では、これらの取り組みによってスジアオノリの安定供給を実現させたい考えです。
そのうえで、早ければ2021年中にも「青のり」の出荷を再開したいとしています。