なるほど>安倍首相コロナ対策失態は中国の影響 力工作か

Snagit1_158.png
Yahoo!ニュース
Yahoo!ニュース Yahoo!ニュースは、新聞・通信社が配信するニュースのほか、映像、雑誌や個人の書き手が執筆する記事など多種多様なニュースを掲載しています。

・米研究機関、「日本における中国の影響力」という報告書発表。
・安倍首相のコロナ対策の遅れは中国の対日影響力行使の結果と分析。
・習近平国賓来訪の計画の為に中国側に忖度した事が最大要因とも。
「安倍晋三首相がコロナウイルス対策で当初、中国に遠慮したのは中国共産党の最も効果的な対日影響力行使の結果かもしれない」

こんな趣旨の指摘がアメリカの有力研究機関が7月下旬に公表した「日本における中国の影響力(China’s Influence in Japan: Everywhere Yet Nowhere in Particular)」と題する調査報告書で明らかにされた。

中国の日本に対する種々の影響力行使の工作について多数の専門家や広範な資料を基礎に調査した同報告書は中国の武漢で発生した新型コロナウイルスが日本で大感染となる経緯に関しても中国の対日影響力行使という観点から詳しく論考していた。

ワシントンの「戦略国際問題研究所(CSIS)」がアメリカ政府国務省の「グローバル関与センター(Global Engagement Center)」の支援を得て作成した同報告書は中国の統一戦線工作部などの諸機関が日本に対してどのように影響力を行使して、どのような結果を得ているかを広範に調査していた。

約50ページの同報告書はCSIS研究員やコロンビア大学教授を歴任した国際政治学者のデビン・スチュワート氏が主体となり、アメリカ、日本、中国などの専門家約40人との面接調査や広範な資料を基に約2年をかけて作成したという。

注目されるのは「日本に影響を及ぼす中国の戦術」という章で今年1月からのコロナウイルスの中国から日本への伝染を取りあげた点だった。

その章では「中国のコロナウイルス利用の試み」という項目で中国当局がコロナウイルス感染を利用して日本側での中国への反応を融和的かつ友好的にしようと努めた実例として鳩山由紀夫元首相が南京の虐殺記念館にマスク1千枚を贈ったことを人民日報などが大々的に報じ、「日中友好」を改めて強調したことが記されていた。

そのうえで同報告書はその時期の日本側の対応として以下の諸点を述べていた。

・日本政府のコロナウイルスへの初期の対応は控え目だった。その原因は中国に対する畏敬の念だと思われた。日本政府が中国の武漢のある湖北省からの来訪者の入国の規制を始めたのは2020年2月1日だった。

・その時点ではアメリカ政府は中国からのすべての外国人来訪者の入国を禁じていた。しかし日本には湖北省以外の中国全土からの直行便多数が平常のまま旅客を満載して到着していた。

・安倍晋三首相はこの危機に対してこの時点では前面に出ず、厚生労働大臣にリーダーシップを委ねるという姿勢だった。

同報告書は以上のような背景を述べたうえで、安倍首相自身の動きについて次のように述べていた。

・安倍首相は4月に予定されていた中国の習近平国家主席への日本への国賓としての来訪計画を前にして中国に不快感を与えることを避けたため、コロナ対策の前面に出ず、中国からの日本入国者の停止の措置をとらなかったといわれる。

・この解釈が正しければ、この安倍首相の対応は中国共産党の日本に対する影響力行使活動でも近年では最大の効果をあげた結果の一つとなるかもしれない。
同報告書はその「中国の対日影響力行使」の実態として以下のように説明していた。

・日本の時事通信は2月19日の報道で「日本政府関係者によると、中国政府は日本側に『習近平国家主席の国賓を控えて、コロナウイルス感染を大ごとにしないでほしい』と要望してきた」と伝えた。この中国の要望のための日本側の遠慮が日本のコロナウイルスに対する対応を遅すぎるものにしたのだ。

同報告書は以上のような記述を続け、中国側からの習近平主席国賓来訪に関する要請がまさに中国の対日影響力行使の実例であり、安倍首相がその点に忖度して、中国からの入国者の規制を先延ばしにしたことはその影響力行使工作の「近年では最大の効果をあげた」実例だとの見解を明示したわけである。

同報告書が引用した時事通信の記事は「中国側からの『大ごとにしないでほしい』という要諦が日本のウイルス対応が後手に回った要因となった」とか「首相側近は『1月時点で中国人すべての入国を止めるしかなかったが、もう遅い』と頭を抱えた」とも報道していた。

いずれにせよ、このアメリカ側の報告書の記述は日本でのコロナウイルス感染拡大は安倍政権が習近平国賓来訪の計画のために中国側に忖度をしたことが最大要因になったという認識が国際的にも定着したともいえる実態を改めて示したようだ。

目次