かれこれ20年以上前の話だったと思います。
ある会社の社長さんから、緊急の案件で呼ばれて、無事仕事を終えて帰ろうとしたときのことです。
その会社に入って間もない経理担当の人から、「短い時間で少しの仕事をして、こんなに高い報酬をもらっていいですね。」
こんなイヤミを言われました。
失礼な人だな、と思いましたが、それを隣で聞いていた社長が、その経理担当の人に、「見合った仕事をしてもらっている」と弁護してくれました。
そして、「そこで仕事をしているパートの人は、今何の仕事をしているのか」と尋ねました。
「今彼女は、Excelにある住所録を、年賀状ソフトに移し替える仕事をしています」と教えてくれました。
続けて、「彼女は仕事が丁寧で早く正確で、とても優秀な人です。」
そのセリフは、私に対する当てつけのような言い方でした。
それを聞いた社長が、私に、「そういえば以前、私の年賀状住所録を作ってくれたことがあったけど、もっと何か良い方法は無いの?」
と尋ねてきました。
そこで、「私がお手伝いして良いのであればお手伝いしますがよろしいですか。」
そう伝えると、その経理担当者の人が、できるものならやってみろと言う態度で、私にその仕事を任せてくれました。
そのパートの人の仕事は、1週間をかけてデータの移し替えをすることだったらしく、すでに3分の1ほどの作業が終わっていました。
私は何をしたかと言うと、
- Excelにある住所録を、年賀状ソフトに移し替えるための形式を整えて、
- そのデータをCSVファイルに書き出し、
- 一括して年賀状ソフトに流し込む作業をしました。
間違えるといけないので、丁寧に仕事をしたので、30分ぐらい時間かかったと思いますが、無事に全部のデータを年賀状ソフトに移し替えることができました。
それを見た社長が、「今日この人に来てやってもらった作業は、パートさんに頼んだら10日ぐらいかかる作業で、それも急いでやってもらったものですよ。」
「パートさんに10日やってもらう仕事を、2時間でしてもらうのに、今回の報酬は、決して高くはないでしょ」
これはその社長さんの言う通りで、具体的に検証してみれば、わかります。
例えば、そのパートの女性が、1週間かけてデータの移し替え作業をする、とします。
仮に時給1000円で8時間フルに働いたとします。
1週間を7日と置き換えると、1000円× 8時間× 7日= 56,000円
つまり、そのデータの移し替えは、時間で言うと7日間、費用で言うと56,000円かかるわけです。
確かにその人の作業は、とても手際が良くて、ほとんど間違いがないみたいです。
ても、間違いはゼロではないと思います。
それに対して、私がしたのは、時間にして約30分です。
作業内容としては、短時間で、しかも、間違いはなく正確に移しています。
今回は、サービス残業のような形で費用は受け取りませんでしたが、仮にこれを仕事として請け負った場合に、間違いなくパートさんの手作業よりも、早くて、正確で、しかも安上がりです。
私がこの出来事を今でも懐かしく思い出すのは、その時の社長の対応が、なるほど、費用対効果をそのように捉えているんだなということでした。
そして、最も印象深かったのが、誰もいないところで言われた、そのそのパートの女性のセリフです。
「お願いですから、私たちの仕事を奪うような余計な事はしないで下さい。迷惑です。」
今、AIが発達すると、今までの仕事がロボットに取って代わられ、仕事がなくなって大変だと言う人がいます。
その心配も確かにもっともだとは思うのですが、今まで人がしていた仕事のうち、ロボットがしても「全く変わらない仕事」については間違いなくロボットに変わっていくと思います。
問題はその時に、人にしかしかできないこと、ロボットではできないこと、あるいはロボットでは不十分な分野、あるいはロボットと人が力を合わせてより大きな効果を発揮できる分野、そーゆー分野が必ずあります。
そこに着目すればいいだけの話しです。
結局、不満や愚痴を言ってるだけの人は、もったいない話です。
それよりは、人である自分の価値を発揮できる分野を磨いていくのが、重要なことなのではないかと思っています。
どうか、このコロナの時代、とても大変な時代ですが、せっかく家にいる時間が増えているので、自分自身のスキルを磨くことに時間を使うようにするのが良いのではないかと思います。
ちなみに、私はこの1年、ほとんどテレビを見ない生活をしています。
見たいテレビ、見たいドラマなどたくさんありますが、せっかく家にいるのですから、スキルを磨く貴重な時間だと考えて、過ごしております。
どうか皆さんも、このコロナに負けないで、有意義な時間をお過ごしください。
コロナに負けないで頑張りましょう。