新型コロナウイルスの感染拡大で、東京都の1日の感染者数が4月4日、5日には3桁に達し、6日には新たに83人の感染が確認された。
【データビジュアル】新型コロナウイルス 国内の感染状況
東京都ではすでに感染者を治療するための病院の病床(当初700床)がほぼ満杯になった。そのため1000床に拡大し、軽症や無症状の感染者を隔離・滞在する施設として、ホテルの借り上げなどさらに「1000床を確保している」といい、7日から受け入れを始める。
そんな中、公益財団法人日本財団が4月3日、品川区の「船の科学館」敷地内にある「日本財団パラアリーナ(以下、パラアリーナ)」と周辺、茨城県つくば市にある所有施設に、約1万2000床の軽症者の受け入れ施設をつくることを発表した。
建設費用なども含めて、すべて日本財団が整備する。会見した笹川陽平会長は「患者数は日に日に増加しており、政府や行政が努力することは当然のことですが、国難を乗り切ることは難しい。できることなら大企業などはさまざまな施設や遊休地があるのでご提供いただいて、国民レベルで一致団結して乗り切る必要があるのではないかと考えています」と話した。
■4月中に1200床を確保する
まず、4月中にパラアリーナ周辺に大型テント9棟を建て、パラアリーナも利用して約1200床を確保する。既存施設を解体するつくば市では7月末から約9000床の受け入れを開始できる予定だという。
「船の科学館」の駐車場は広大な敷地。周辺も加えて、2250平方メートルの大型テント1棟に、800平方メートル、600平方メートル各4棟を作る。
医師や看護師の宿泊、休憩場所なども設置する。テントといっても基礎を作り、鉄骨も入れた強固なもので、風速30メートルでも大丈夫だという。
隣接するパラアリーナは、日本財団傘下のパラリンピックサポートセンター(パラサポ)が運営している。何度か取材に行ったことがある。ここも「病床」として利用する。
笹川会長はパラサポの山脇康会長と協議。「パラアスリートの方にも連絡を取っていただき、最大限協力すると快く明け渡していただくことになりました」という。
東京パラリンピックが1年延期になり、現在は外出自粛要請もあって練習もままならない状態ではあるが、練習再開となってもこの施設が使えるかどうかはわからない。その中で「みんなのために」というパラアスリートたちの思いには頭が下がる。
山脇会長は「2018年6月1日より運営を開始し、これまで稼働日率ほぼ100%で活用されてきました。パラスポーツの日常的な練習のためにご活用いただいているアスリートの皆様には、パラアリーナを一時的に閉館するという今回の決定により、皆様の日常の練習に多大なご迷惑をおかけすることになり大変心苦しく思っております。
世界各地ですでに起こっていることは、スポーツの域を遙かに超えた人類の危機であり、新型コロナ感染拡大を阻止し、人々の命を守ることにあらゆる手をつくすことが最優先であると思います。アスリートの皆様、関係者の皆様、またパラリンピック、パラスポーツを応援いただいているファンの皆様と共に、この困難な時期を乗り越え、健康で安心安全な社会を取り戻すことに全力で取り組んでまいります」とパラサポHPでコメントを発信した。
■パラアリーナとはどんな施設なのか?
国内感染者が4000人に達したが、障がい者の情報は伝わってこない。パラアリーナはパラスポーツの専用施設なので、「ユニバーサルデザイン」を採用したバリアフリーの施設だ。
トイレ、洗面所、シャワーなど、障がい者が使いやすいように設計されていて、点字ブロックも随所にあり、障がい者が感染した場合に、既存の施設に比べてあまり不自由を感じずに過ごせるだろう。
パラアリーナ全体で3000平方メートルの場所を確保できるといい、その多くを占める体育館は、自然災害時の学校体育館の避難所のようにベッドと仕切りがあればすぐにでも使用可能だ。感染者が対象なので、医療関係者がきちんと防護すれば、他に感染することもない。
「専門家の意見をきちっと聞いて、まずは外側をきちっと作って、中はいかようにもできる。家族単位の仕切りも必要だということなので、臨機応変に対応できるようにしたい。予想してこうだということでは危機対応ができないと思っている」としている。
日本財団は「一つの地球に生きる、一つの家族として。人の痛みや苦しみを誰もが共にし、『みんなが、みんなを支える社会』をめざす」(HPより)を活動理念として掲げている。子供たち、障がい者、災害復興、難病など、いわゆる弱者への支援を中心に行っている。その一環がパラリンピックのサポート事業であり、パラアリーナ建設、パラアスリート支援だった。
今回の施設提供では建設費のほかにも医師、看護師の給料、食事その他、必要とされる経費について日本財団が全額負担する。
日本財団は、HPによると国土交通大臣が指定する船舶等振興機関として、全国の地方自治体が主催するボートレースの売上金から75%の配当金を引いた残りの25%のうち、約2.9%を交付金として受け入れ、国内外の公益事業を実施している団体への事業支援を行っている。売り上げ1.5兆円といわれるので、100億円程度の交付金がある。その財源を活用するという決断だった。
■走りながら考えて即断即決で
なにより「緊急時はスピード、スピードが大切です。東日本大震災、熊本地震でも対策本部を現地に立ちあげ、熊本は1日で立ち上げた。走りながら考えて即断即決で考えてやっていく、そうした経験をしてきているので、今回の意思決定、発表までの時間は2日半だった」と笹川会長は話した。
政府は新型コロナウイルスの感染拡大に備える改正特別措置法に基づいて緊急事態宣言を7日にも出す予定だ。同時に、緊急経済対策にも言及している。
緊急事態宣言の対象地域である東京都の小池百合子都知事をはじめ、地方自治体首長は政府の判断を待ってきた。特別措置法では「自粛要請」に法的根拠ができるということだが、今までの「自粛要請」に国民の多くは従って我慢している。
一部従っていない人たちが批判されているが、特措法でも強制力や罰則規定はないので、今までと大きく変わりない。イベント開催や建物の出入りを「強制」でやめさせることはできるが、「補償」がセットでなければ、倒産企業、失業者、生活困窮者が増えるだけだ。特措法には補償は盛り込まれていない。
「コロナ軽症者に1万床」日本財団が動いた
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200407-00342570-toyo-bus_all&p=1