東京都の新型コロナウイルスのモニタリング会議が7月22日に開かれ、専門家から「『都の医療体制が逼迫(ひっぱく)していない』という政府の説明は誤り」と厳しい指摘が出た。菅義偉官房長官は21日午後の会見で、東京都の医療提供体制について「逼迫している状況にはない」との見解を示していた。
目次■入院の調整「非常に困難」
杏林大の山口芳裕教授は、医療提供体制の現状について、 ・入院患者数は21日時点で949人で、先週に比べて約1.4倍に増加 ・保健所が自らの管轄で調整がつかず、都庁に入院の調整を依頼している件数は1日平均で約100件で、先週の2倍以上に増えている ・重症患者数が先週の6人から14人となり、数としては少ないが倍増している ことを会議で報告。「入院の調整に非常に困難が生じている」と述べた。重症化リスクの高い高年齢層に感染が広がっていることを踏まえ、「40代50代の重症例が散見され、今後の推移に警戒が必要」と強調した。
■「逼迫」の2つの根拠
会議では、医療提供体制の分析結果としては、先週と同じで「体制強化が必要」とのオレンジ色の段階に据え置いた。ただ、山口氏は「しかしながら、これをもって国のリーダーが使われている『東京の医療は逼迫していない』というのは2つの観点から誤り」と述べ、菅官房長官の見解を一蹴した。 山口氏は理由について、以下のように説明した。 「一つは病床の拡大には2週間以上の時間が必要。病床のレイアウトやシフトの変更、感染防止対策の徹底、すでに入院している患者を他に移動させるといった大変な作業がある。少なくとも2週間先を見越して現場の状況を評価する必要がある。それが責任ある評価だと思う。 150%の増加率で患者が増加している状況、重症者が倍増している状況では、とても逼迫していないとは申し上げられない」 「2つ目は、ベッドが確保されているイコール患者を入院させられる、ということではない。 コロナ患者の入退院には通常の患者より多くの手間がかかり、多くのマンパワーが必要。患者対応の長期化で現場の医療は本当に疲弊している。特に週末祝日は空いているはずの病床に患者が入院できない現象が生じている」と警鐘を鳴らす。 山口氏は、22日から始まったGo Toトラベルキャンペーンにも言及。 「赤(モニタリングの指標で最も悪い段階)ではないが、医療関係者をはじめ都の職員、保健所、ホテル、様々な人の努力や苦労によってオレンジ(の段階)で踏ん張っている、こらえていると知事にはご理解いただきたい。こうした現場の労苦に対する想像力を持たない方に、赤ではないということで『大丈夫だからみなさん遊びましょう、旅しましょう』という根拠に使われないことを切に願います」