我が家は、大学受験真っ最中。
全部終わってから、今までを振り返ってみたい。
いよいよ1月から埼玉県や千葉県など首都圏を中心に中学入試が始まります。多くの受験生は冬期講習や正月特訓など入試直前まで塾に通い続けて本番を迎えますが、これまで親御さんたちが支払ってきた塾費用は一般サラリーマン家庭から見たら「しんどい額」だとか…一体、中学受験にかかる塾の費用はどれくらいなのでしょうか? 塾費用の相場について、子育てや教育情報を発信するサイト「スタスタ」を運営するスタディスタジオ代表の鈴木孝一さんに解説していただくとともに、受験生を持つ保護者の方には実際にかかった費用についてお話を伺いました。
【写真】SNS上で話題になった1月分の塾代の明細
■大手進学塾の年間費用、6年生は「MAX140万円前後」
まず鈴木さんに、SAPIXや日能研、早稲田アカデミー、四谷大塚など首都圏を中心とした大手中学受験塾(集団塾)の年間にかかる費用について、解説していただきました(※数字は概算です。前後する場合もあります)。
「中学受験をする場合、カリキュラムがスタートする小3の2月(新4年)から進学塾に通うのが王道です。各学年の通常授業料や施設利用料、講習費など年間にかかる費用(4科目コース)を見てみますと、4年生は約90万円〜110万円、5年生は約100万円〜120万円、6年生は約110万円〜140万円という相場となっています」
「そして3年間トータルでは、少なくとも300万〜360万円の費用がかかります。注意していただきたいのが、塾によって4年生でかかる費用は比較的安めで油断をしていると6年生に上がって急激に高くなるところもありますので、入塾の際には3年間トータルでどれくらいの費用がかかるのかも調べておくとよいでしょう」
また、集団塾に通うだけではなく家庭教師を頼むとなると、さらに費用がかさむといいます。
「大手塾に通っていたら、宿題がたくさん出ますからそれをこなすだけで精いっぱいで、家庭教師に勉強を見てもらう時間の余裕もないかと思います。家庭教師をお願いする場合、宿題を一緒にやってもらうため、あるいは、授業についていけない、分からないところをマンツーマンで教えてもらうために家庭教師をつけるご家庭が多いようです」
「例えば、週1日90分家庭教師に来てもらうとなると、1時間5000円〜8000円の授業料として月3万〜5万円ほど。年間でいうと36万〜60万円くらい費用が上乗せされることになります」
■中受の保護者「最高の教育環境を与えてあげたい」…教育にかかるお金に糸目を付けない
ともすると、3年間で400万円を超える場合もあるようです。ただ、どんなに高い”投資”をしてでも子どもに中学受験をさせたいという親も少なくないといいます。このようなご家庭について、鈴木さんはこう説明します。
「そもそも中学受験にお金をかけるご家庭は、中学入試を突破した優秀な子どもたちが集まる学校こそ、最高の教育環境だと思っているからです。そういったご家庭の特徴として挙げられるのは、塾だけではなく小さいころからお子さんの可能性を伸ばそうとたくさんの習い事をさせていたりしています。要するに教育熱心であり、教育にかけるお金に糸目を付けないご家庭がほとんどです
ただ、中学受験をするお子さんが多い学校では、『みんな(中学受験塾に)通っているから』などと周りに流されてよく考えずに受験塾にお子さんを通わせてしまうご家庭もいらっしゃいます。そういうご家庭に限って学年を重ねるごとに高くなる塾の費用に驚いてしまうようです」。
■少しでも塾費用を抑えるポイントとは?
やはり、中学受験にかかる塾の費用は決して安くはありません。6年の費用をマックスに3年間で数百万円ほどかかることを知らないまま受験を目指すのは非常に危険なことです。そこで最後に、少しでも塾費用を抑えるポイントを鈴木さんに教えていただきました。
「まず優秀なお子さんであれば、成績優秀者などを対象にした特待生制度を狙ってみるのもおすすめします。各塾によって基準は違いますが、その都度行われるテストで上位に入るなど特待生に選ばれれば入塾金や授業料一部免除などの費用免除を受けることができます。このほか、塾が実施している1カ月授業料無料キャンペーンや、塾選びをする際に入塾祝い金を受け取れる『入塾お祝い制度』があるサイトを利用するなど入塾時だけでも費用を軽減する方法もあります。
また、お子さんの勉強管理ができるご家庭であれば、中学受験に対応したオンライン授業サービスや通信講座などを利用するのもおすすめです。通塾するよりは費用を抑えることができます」。
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続いて受験学年の6年になると、実際にどの程度の費用がかかるのでしょうか? 実例をご紹介します。
公立中高一貫校受験を目指すお子さん(6年)を持つ保護者Cさん。最近、SNS上で1月分の塾代の明細を公開して話題になったといいます。
■冬期講習3泊4日の合宿を含め15日分で22万 最後の”追い込み”にかける
「1月授業料39,600円、冬期講習代227,370円、1月直前特訓42,240円・・・合計309,210円」
1カ月だけで約30万という高額に「一瞬、目を疑いました」とCさん。しかし「内訳から冬期講習代と正月合宿代が合算されていることを確認して納得しました。冬期講習は3泊4日の合宿を含め15日分ですから22万円は妥当だと思っています。これまでも夏期講習がある8月の塾代が31万円ほどでしたし、長期にわたる講習が高額なのは覚悟していました」と話します。
冬期講習代だけをみても、5年生のときの講習代7万円台と比べて3倍ほどの金額を6年生では支払ったといいます。さらに、6年で支払った年間(2020年2月分から2021年1月分)の費用は約160万円ほど。通常授業以外に日曜特訓代や週末合宿代、模試費用などが上乗せされていたそうです。
■塾費用が高額でも…Cさん「目標に向かって努力するという経験は無駄にはならない」
Cさんのお子さんが通うのは大手進学塾。塾に通い始めたのは、3年の冬からとのこと。
当初は「授業料が無料」ということで軽い気持ちで通わせてみたそうです。そして5年の秋、ある公立中高一貫校の文化祭を見て、お子さんが「この学校に行きたい!」と自ら受験を希望したといいます。「最初は塾代もそれほど高くはなかったので軽い気持ちで通塾させていたのですが、学年が上がるごとに徐々に高額になってきました。やる気がなければ途中で辞めさせて他に興味がある習い事などの費用に当てようとも思っていましたが…文化祭をきっかけに、本人が受験をすることに本気になったので、目指したいならサポートしてあげたいと思うようになったんです。
うちの子は環境にかなり左右されやすい傾向があったので、同じ目標をもつ仲間の中にいることはモチベーションを保つ上でも、塾に通い続けることが必要だと感じました。また受験のノウハウはプロに任せるべきだとも考えて。我が家は、受験勉強ができる環境を手に入れるためにお金をかけたのです。たとえ志望校に合格できなかったとしても、自分の目標に向かって努力するという経験は無駄にはならないと思います」とCさん。
これまで中学受験にかかった費用について「確かに高いと感じましたが親としては全く後悔はないです。子どもは塾に行くことで他校の友だちもできましたし、競い合いながらも一緒に勉強する楽しさを知ることができました。そして、何よりもやる気を伸ばしてくれた塾の先生方にも感謝しています。我が家の考える中学受験は、本人が目指したいことに制限をかけたくなかった。ただそれだけです」。
Cさんのお子さんが目指す公立中高一貫校の入試は2月。何よりもお子さんの強い意志に”投資”したCさんご家族の思いが叶い、合格を勝ち取れることを願っています。
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◆鈴木 孝一(スタディスタジオ代表)
1984年生まれ、大阪府出身。東京工業大学大学院 修士課程修了。在学時からデータ解析系スタートアップにて2年半インターンシップ生として従事したのち入社。2011年理科教育会社を設立、代表取締役に就任。実験キットやサイエンスグッズの開発、理科実験教室カリキュラム構築、出張講師などを行う。2018年7月スタディスタジオ株式会社を創業し、代表取締役に就任。「スタスタ」を運営する傍ら、オンラインで「こどもコーチング」なども行う。NHK「おはよう日本」などメディアにも出演経験あり。