前線で戦うウクライナ兵たちのために歌いながら食事を用意する女性たち
【3月13日 AFP】ウクライナの首都キエフにロシア軍が迫りつつある中、キエフ北東の前線に近い場所で、兵士や市民のために炊き出しのボランティアをする人々。11日撮影。
この炊き出しを呼びかけた教師のビクトリア・エルマコワ(Victoria Yermakova)さん(45)によれば、1日に5000人から6000人分の食事を作っているという。(c)AFP
https://www.afpbb.com/articles/-/3394769?cx_part=latest
ロシア軍制圧下で料理人の抵抗、パンを焼き苦境の市民へ分配 ウクライナ南部
(CNN) 侵攻したロシア軍が制圧したウクライナ南部のヘルソン市で、退避せずに踏みとどまり、毎日パンを焼いて食料に困っている市民に配る抵抗戦術を続けている男性の料理人がいる。
パブロ・セルベトニックさん(28)で、侵攻が始まって以降、満足な睡眠も取らず夜明けから1日20時間働き、数千個のパンを作っている。この後、トラックや車に積み、人影が消えた通りを走って、食料がろくに届かない苦境にある住民にわけている。
同市の人口は約30万人。ロシアの侵攻で最初に陥落した主要都市でもあった。先月24日の侵攻開始後、ウクライナ国民の生存をかけた戦いは厳しくなっている。基本的な生活物資の供給は乏しくなり、寒さは募り、多くの都市はロシア軍の激しい砲撃にさらされている。
広告国民は共通の敵を前に団結して、銃を手にしない抵抗の手段を模索し続けている。ヘルソン市でも最近、数百人の市民が路上に出てロシア軍による銃声や兵士の姿を無視して抗議活動を起こした。
トラックを使ってパンを配達している/Servetnyk Pavlo
トラックを使ってパンを配達している/Servetnyk Pavlo
ただ、市民の大半は逃避したり、市内全域に検問所を構えているロシア軍兵士との遭遇を怖れ、家内などにこもり続けたりしている。セルベトニックさんはCNNの取材に、数時間のパン焼きの作業を終えた後、体のあちこちが痛いし、ドアを開けられないともこぼした。侵攻前は料理人として成功を収めていた。2019年にはウクライナのマスターシェフの称号を獲得。ヘルソンでピザ料理店を営んでいた。
侵攻が生活を一変させた。「パンもなかった。崩壊だった」と思い返した。ロシア軍が同市に侵入したのは3月2日。市長は5日までには進駐が始まり、撤退の兆しはないと認めていた。
ロシア軍がウクライナに砲撃を加え始めると、セルベトニックさんはパートナーと共にヘルソン郊外の村落にある両親の家に車で向かい、一緒の避難を促したことがあった。
しかし、混乱の時期も乗り越える人生を過ごしてきた両親は「どこに逃げるのか? そこで誰が待っている?」と笑って聞き流した。「ロシア人が間もなく来る。ここは今やロシアの土地であると言うだろう」とも続けたという。
この言葉を聞き、セルベトニックさんは地元に残り、ロシア軍への抵抗を決意した。多くのパン焼きの職人は退避するか身を隠していた。ピザレストランのパン屋への改造にも踏み切った。
ほかのパン屋も誘い、作ったものをより多くの市民に分配もした。セルベトニックさんは「我々は逃げなかったし、立ち去りもしなかった。住民を出来る限り助けることを始めた」と振り返った。
セルベトニックさんはロシア軍が侵攻してくる前はピザ料理店を営んでいた/Servetnyk Pavlo
セルベトニックさんはロシア軍が侵攻してくる前はピザ料理店を営んでいた/Servetnyk Pavlo
大半のパンは同市郊外の孤児院や高齢者たちに無料で届ける。配達にはリスクが毎回伴う。しかし、提供しなければパンを待っている人々が空腹に襲われるかもしれない。パンの材料の在庫分は約2週間分しかないと考えている。使い切った後にどうなるかは知るよしもないと述べた。セルベトニックさんはパンを焼くのに必要な燃料費などの経費を賄うため世界中の献金者から支えられてきた。
「ロシア人がウクライナの土地を奪ったとしても、ウクライナ人を奪うことは出来ないだろう」とも言い切った。何のためにウクライナ人は戦うのかと尋ねたが、「その質問はむしろロシア人に向けるべきだ」とし、「戦いは我々の土地と自由のためだ」と断じた。
一刻も早く、当たり前の生活が戻りますように